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麻酔の目的は、手術中の不快な感覚や痛みを取り除き、患者さんの意識や記憶をなくすこと、筋肉を弛緩させて手術操作を容易にし、手術や検査が安全に達成されるように患者さんの全身状態を監視し生命を守ることです。麻酔科医は患者さんの呼吸や脈拍、血圧などを常時監視して必要に応じて人工呼吸を調節し、輸液や投薬を行います。また手術が終わった後の痛みに関しても出来る限り少なくするように配慮しています。こどもの場合は大人よりも、麻酔や手術に対する不安が強いことが多いですが、不安を周りの大人に伝えることも苦手なので、当院麻酔科や手術室は不安を軽減する取り組みも行っています。

術前診察

麻酔を行う前には必ずご本人を診察させていただきます。麻酔に影響のある身体的特徴・問題がないかチェックさせていただきます。聴診では心臓の雑音がないか、呼吸音(痰がらみ、喘息など)に問題がないかなどを中心に診ます。口の中、特に抜けそうな歯がないかなどもチェックします。アレルギーをお持ちだったり、お子さんが過去に病気で治療を受けたり、手術や麻酔を受けたりされた方は病歴についてもお伺いします。また保護者の皆様やお子さんの麻酔や手術に関するご心配や不安などについても外来担当の麻酔科医がお話をお聞きして対応いたします。

術前診察の際に持参していただきたいもの

  • 母子手帳
  • おくすり手帳

術前診察で麻酔科医が知りたいこと

  1. 最近2~3週間以内に風邪を引いたことがありませんか?また現在、風邪の症状(咳や鼻水)はありませんか?
    *風邪の時は麻酔中に血液中の酸素の量が少なくなったり、痰が多いと肺炎になったり肺が潰れて無気肺という部分ができやすくなります。麻酔は風邪症状が治ってから2週間以上間隔を開けることが推奨されています。
  2. 喘息はありませんか?
    *全身麻酔中に気管に人工呼吸のためのチューブを入れることで喘息の発作が誘発されることがあります。麻酔科医が最近の喘息発作の状態や、気管支のお薬の内容についてお伺いします。
  3. お薬や食べ物にアレルギーはありませんか?
    *麻酔薬の中には食べ物と共通したアレルギーを起こすものがあります。アレルギーがある場合はそうした麻酔薬の使用を避けたほうが良い場合があります。またラテックス(ゴム)のアレルギーを起こすこともあります。
  4. グラグラしている歯や抜けそうな歯はありませんか?
    *麻酔中に歯が抜けて口の中に残ったり、気管に入ってしまうと大変危険です。抜けそうな歯は麻酔中に抜歯させていただくことがあります。
  5. 過去に麻酔や手術を受けた経験
    *これまで麻酔を受けたことのある場合で、麻酔中や後になんらかの異常があったり麻酔後に吐き気が強かった、興奮して暴れたことなどあればお知らせください。
  6. 内服している薬はありますか?
    *普段内服している薬は麻酔前に継続する必要のあるものと中断するものがあります。麻酔科医が服薬内容を把握するため、診察時にお薬手帳をご持参ください。
  7. 家族歴
    *全身麻酔に特有の合併症の中に悪性高熱症という麻酔薬に反応して高い熱・ショックの状態になってしまう病気があります。極めて稀な病気ですが、遺伝的背景のある病気なので血縁の方の手術・麻酔歴と麻酔で異常がなかったかを教えてください。また筋ジストロフィーのような筋肉の疾患とも関連があるので併せてお知らせください。

麻酔の説明と同意

診察が終わったら、麻酔の説明を行います。麻酔の方法はお子様の状態、病気の種類、手術や検査内容から麻酔科医が最適と判断したものを選択し、ご説明しますので疑問があれば遠慮なくお聞きください。説明をお聞きになり、納得されましたら麻酔同意書にお子さんと合わせて保護者の署名をいただきます。成年の患者さんはご本人の署名のみお願いします。

術前絶飲食

麻酔中や麻酔の後には、吐き気があったり、吐いてしまったりすることがあります。吐いたものを誤嚥することを予防するため、麻酔の前には胃の中に食物や飲み物がない状態にしなければいけません。そのために手術の前の食事の内容や食事の時間、水分摂取の内容と時間について事前に麻酔科医から指示があります。この指示は必ず守っていただく必要があります。

麻酔前投薬

麻酔前の緊張を和らげるために麻酔の前に服用していただくお薬のことです。抗不安薬ともいいます。薬は多くはシロップ状の液体ですが、お子さんの年齢によっては粉薬や錠剤を飲んでいただくこともあります。内服後はふらつきが出ることがありますので転倒や転落に気をつけてください。また小さなお子さんでは普段より活発になったり、おしゃべりになることもあります。

麻酔当日~手術室入室

決められた入室時間になったら病棟看護師と一緒に手術室に向かいます。小さなお子さんや不安の強いお子さんの場合はあらかじめ手術室にくる前に不安を少なくするお薬(麻酔前投薬*)を内服していただきます。リラックスのためにお気に入りの玩具や本などを持参していただくこともできますので、あらかじめ手術室看護師にご相談ください。手術室の中ではお子さんのお気に入りの音楽をかけたり、ゲームを用意したりしてお子様の不安を少なくするよう努めています。

麻酔当日~麻酔の開始

前日に点滴が入っている場合や、点滴からの麻酔が好ましい場合は静脈麻酔薬で麻酔を導入します。あらかじめ針の穿刺の痛みを和らげるシールのお薬を使うこともできます。それ以外の場合は吸入麻酔薬というガスの麻酔薬をマスクで吸っていただき麻酔をします。麻酔のマスクにはあらかじめお菓子や果物などの匂いをつけてありますのでお子さんは自分の選んだ好きな匂いを嗅ぎながら眠ってしまいます。その後はその手術や検査に最適と思われる方法で麻酔を行います。

麻酔当日~麻酔からの覚醒

手術や検査が終わったら麻酔は終了です。呼吸や血圧などが安全であることを確認して病室に帰ります。麻酔薬はゆっくりと体から代謝されて消えていきますが、小さなこどもではこの時に興奮したり暴れたりすることがあります。原因として麻酔薬がごく少量残っているためと言われます。この興奮を抑えるために時に鎮静薬を投与することがあります。通常は帰室2時間ほどでしっかり目をさまして、飲水や飲食が可能になります。ただし、お腹の手術など手術の内容によっては術後も絶飲食が続く場合もあります。手術の傷の痛みを訴える場合は鎮痛剤の投与ができます。

気道確保

気道とは口や鼻から肺につながる気管までの体の部分です。麻酔中は麻酔薬や筋肉を弛緩させる薬の影響で呼吸が十分にできない状態になるので、呼吸を補助したり人工呼吸が必要になりますが、この時気道が塞がったり狭くなって有効な呼吸ができないことがあります。呼吸を確実にしていただくために気管にチューブを入れたり(気管挿管)、ラリンゲルマスクといった口の中に入れるタイプの器具を使用することがあり、気道確保といいます。気管挿管の時には、喉頭鏡という口を大きく開ける器具を使いますが、歯に負担がかかるので、時にぐらついた歯が抜けたりすることがあります。

硬膜外麻酔・脊椎くも膜下麻酔(腰椎麻酔)

硬膜外麻酔は背中あるいはお尻から、脊椎くも膜下麻酔は腰部の脊椎という骨の間から針を刺して麻酔のお薬を投与する方法です。手術の傷の痛みを抑えるために効果があります。術前診察の際には硬膜外麻酔を予定している患者さんのお背中やお尻を見せていただくことがあります。腰椎麻酔はおもに帝王切開を予定されている妊婦さんにおこないます。硬膜外麻酔をこどもで行う場合は、針を刺したり薬の投与は全身麻酔をしてから行います。硬膜外麻酔はカテーテルという細い管をそのまま残して手術の後も痛み止めの薬を数日間に投与して痛みを抑えるのに使います。副作用として手足のしびれや感覚障害、吐き気などが起こることがありますが薬を止めれば回復します。

末梢神経ブロック

腕や足の手術、臍ヘルニア、鼠径ヘルニア、陰嚢水腫、停留睾丸の手術などで行われる方法です。手術をする部位のより近いところで神経を麻酔し痛みをとる方法です。大人の手術で良く行われていますが、こどもの全身麻酔でも超音波画像装置を使うことで安全に実施できるようになりました。手足のしびれや吐き気といった副作用がでることは比較的少ないです。

中心静脈穿刺

中心静脈というのは首や足の付け根の太い静脈を指します。心臓の手術や大きな外科の手術、あるいは長期に点滴が必要な場合などに行うことがあります。

よくある質問とその答え

小さなこどもに麻酔をかけて安全でしょうか?

麻酔は本来痛みをともなう手術や検査を安全に苦痛なく行うために欠かせない優れた医療です。医療技術の進歩によって安全性も飛躍的に向上しています。しかし、どんな場合でも安全で全く偶発症がない、というわけではありません。患者さんの状態によっては危険を伴う場合もあります。日本麻酔科学会の調査では麻酔に関連した死亡率は約10万例に1例と報告されていますが、私たちはより慎重に安全な麻酔を提供するように日々努力しています。
また長期にわたる麻酔の影響については動物実験で麻酔薬や鎮静薬の一部が生まれたばかりの動物の脳の神経細胞に障害を起こすことが報告されています。しかし現時点では人間では小児期に使用した麻酔薬がその後の発育に影響をおよぼすかどうかは確認されていません。ご心配の方は麻酔担当医にお尋ねください。

プロポフォールという麻酔薬で事故がありましたが、問題はないですか?

プロポフォールという薬は日本では15年、世界では20年以上使用されている実績のある麻酔薬です。集中治療室で長時間大量投与されるとプロポフォール症候群という心停止を含む病態になることが報告されています。当院では麻酔中の使用に限っており、過量投与にならないように慎重に投与しています。

長い手術の途中で麻酔が醒めてしまうということはありませんか?

長時間の手術や麻酔でも、麻酔科医が患者さんのそばでずっとつきっきりでモニターを監視して適切な麻酔を維持しています。途中で目が醒めることはありません。

こどもには心配させたくないので手術ではなく検査だといってもよいですか?

お子さんが理解できる範囲で、できるだけ本当のことを伝えてください。こどもは嘘が嫌いです。最初は嫌がるかもしれませんが、きちんと伝えるとほとんどの場合、理解してもらえます。

麻酔からはいつ醒めますか?

心臓の手術や大きな手術で気管挿管したまま集中治療室に帰る場合などを除き、手術室から退室するときには麻酔から醒めはじめています。ただ、しっかり目が覚める前に激しく興奮した場合、鎮静薬を投与することがあるので、その場合はしばらく眠っていることもあります。

産科(帝王切開の)麻酔について

帝王切開術の麻酔の第一の目的はお母さんの手術が痛みなく安全に終了することですが、同時にお腹の赤ちゃんには麻酔の影響ができるだけ少ないことが大切になります。手術では通常脊椎くも膜下麻酔か硬膜外麻酔で下半身だけの麻酔をおこないます。以前に背骨の手術をしたことがあり背中に針を刺すことが出来ない場合や赤ちゃんやお母さんの体調のために緊急で背中からの麻酔ができない時には全身麻酔をおこなうこともあります。その場合はお母さんの胎盤をから赤ちゃんに麻酔薬が入るのをできるだけ防ぐため、お腹の消毒が終わり手術の準備が全て整ってから麻酔のお薬を点滴から投与します。

もっと詳しく麻酔についてお知りになりたい方は、
日本小児麻酔学会のホームページもしくは日本麻酔科学会ホームページをご覧ください。

五十嵐 あゆ子 
(いがらし あゆこ)

職名 科長 兼 循環器センター
診療領域
専門領域
小児麻酔
資格等 日本麻酔科学会専門医・指導医
日本小児麻酔学会認定医

北村 英惠 
(きたむら はなえ)

職名 部長
診療領域
専門領域
(確認中)
資格等

(確認中)

戸田 法子 
(とだ のりこ)

職名 部長
診療領域
専門領域
小児麻酔
資格等

日本麻酔科学会認定医専門医・指導医
日本小児麻酔学会認定医
心臓血管麻酔専門医

菊地 千歌 
(きくち ちか)

職名 部長
診療領域
専門領域
小児麻酔
資格等 日本麻酔科学会認定医・専門医・指導医
日本小児麻酔学会認定医

篠﨑 友哉 
(しのざき ともなり)

職名 部長
診療領域
専門領域
小児麻酔
資格等 日本麻酔科学会専門医・指導医
日本小児麻酔学会認定医

田崎 貴大 
(たさき たかひろ)

職名 フェロー

 

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