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小児神経外科疾患に対して幅広く診療を行っています。水頭症、頭蓋縫合早期癒合症やその他頭蓋変形、二分脊椎症(脊髄髄膜瘤、脊髄脂肪腫など)、キアリ奇形、脳血管疾患(特にもやもや病)、良性脳腫瘍(嚢胞性疾患、頭蓋咽頭腫など)、などに対して診療を行っています。また、治療困難な疾患に対しても患者本人、家族と相談し可能な限りの対応を行っております。
小児の神経外科疾患においては常に発育・発達の視点が重要と考えています。外科ですから手術成績は大切ですが、本当に手術が必要か、手術後の経過はどうか、という視点を大切にし、胎児期から成人期にいたる多種多様な問題に関して泌尿器科、整形外科、形成外科、小児外科、産科などの関連各科と共に診療に取り組んでいます。また、精神・運動発達や日常生活の援助に対してこども病院の様々なスタッフと連携して診療にあたっています。
難易度の高い病気や稀少な病気を含めて、どのような患者さんに対しても、東北地方唯一の小児脳神経外科専門病院として、可能な限り、治療を提供できるように努めています。また、難易度の高い手術・新たな治療法の開発が期待される分野についても、関係各科と協力して、積極的に取り組んでいます。
一方、当科では可能な限り患者への侵襲を小さくすることを目指しています。術後の疼痛はもちろん、患者・家族の負担を軽減すべく最低限の安静度制限、早期の退院を可能としています。

外来

新患受診を希望される方は紹介状を持参ください。外来日は月曜、水曜、金曜です。急ぎの受診を希望の場合には予約の際にその旨をお話しください。

入院

手術を受ける方が対象となります。基本的には手術前日午前中に入院していただき、術前検査、麻酔科受診、手術の詳細な説明等がなされます。入院期間は手術内容にもよりますが術後3日目から10日程度です。手術日は火曜、木曜です。

検査

2才以下の乳児では特に放射線被曝による影響が高いと考えられ、頭蓋内病変のスクリーニング検査にはCT検査の代わりにHASTE法を用いた無鎮静MRI(PDF-P1)を行っています。

手術

当科での脳神経外科手術の特徴は、可能な限り手術創を小さくし剃髪も最小限にとどめる事にあります。これは早期の復学復職に際しての身体的及び精神的負担を軽減するためです。開頭範囲や脊椎骨に対する手術操作も必要最小限にとどめて、いわゆる鍵穴手術(Keyhole Surgery)を基本としています。顕微鏡手術と内視鏡手術、ナビゲーションシステム、術中神経生理学的モニタリングなどを融合させる事によって可能なものとなっており、その結果として入院期間が短縮されています。

「日本脳神経外科学会データベース研究事業(Japan Neurosurgical Database:JND) 」への協力について

水頭症

乳児に対しては原則的に脳室腹腔短絡術(以下VPシャント)を行いますが髄液流出路の閉塞が原因の閉塞性水頭症と診断された場合には、乳幼児でも積極的に神経内視鏡による治療(第3脳室底開窓術)を行っています。また、水頭症の原因に応じて、嚢胞開窓術や中隔開窓術など様々な手技を行っています。 シャント手術後の経過観察には放射線被曝を避け、無鎮静HASTE-MRIを用いています。手術後の発育、発達についても当院他科およびコメディカルフタッフと連携し、外来での経過観察を行っていきます。

頭蓋骨縫合早期癒合症

頭蓋縫合は頭蓋の成長のために重要で、この線の部分から頭蓋が拡大してゆきます。縫合線が早期に癒合すると頭蓋が変形し、さらに頭蓋容積が小さくなると頭蓋内圧が亢進し脳・神経の発達に影響が出るようになります。
頭蓋縫合早期癒合による頭蓋変形に対しては、1)頭蓋縫合を新たに作成する縫合切除術、2)頭蓋拡大形成術を行っています。生後6か月までに診断された場合には手術後のヘルメット矯正を行うことで低侵襲な縫合切除術が可能です。頭蓋変形が重度、あるいは複数の場合は、段階的に手術計画を練る必要があります。我々は患者さんの頭蓋形態に合わせて、形成外科と連携して縫合切除や頭蓋骨形成、様々な頭蓋骨延長器の装着など、様々な治療手段を組み合わせて治療を行っています(PDF-P2)。
また、縫合線の異常を伴わない頭位性の頭蓋変形に対しては、早期に気づくことが大切で、頭が接地する位置を変える、枕などにより矯正する、などで対応することができます。しかしながら、程度が強い場合には矯正ヘルメットの作成について相談に応じております。頭蓋は概ね学童期にその成長を終えますので、それまでの間は外来での経過観察を行います。私たちは形成外科と共に整容的な改善(見た目の改善)が患者の発育発達(社会的環境への対応など)に大きく影響するとも考えています。気になることがありましたら是非相談してください。

二分脊椎

二分脊椎症による様々な症状に対して手術治療を行っています。出生前に診断された病変に対しては当院産科と連携し、出生前より様々な問題に対応しています。出生後に判明した病変に対しては脊髄が露出している病変(脊髄髄膜瘤)に対しては原則として出生24時間以内に、それ以外の脊髄脂肪腫などに対しては症状が既に出現している場合には可及的早期に、予防的な手術は病型に応じて適切な時期に手術を行うようにしています。
当科では低侵襲手術を行っており、終糸部脂肪腫に対しては手術前日に入院後、手術当日から安静度に制限なく管理しています。最短で術後2日目に退院可能です。円錐部脂肪腫に対しては脂肪腫の亜全摘法を導入し手術後長期にわたり症状が悪化することがないように努めています。この手術では筋肉への侵襲が高いため術後疼痛に対して積極的な鎮痛を行っていますが、同時に安静度には制限を設けず、本人の状態に応じて早期に離床できるように努めています(概ね術後1週間で退院)。
手術後に脊髄が癒着により係留される脊髄係留症候群に対しては泌尿器科、整形外科など他科と連携し早期診断、早期治療を行うことにより良好な手術結果を得ています。この病気は症状を放置すると後で手術を行っても症状の改善率が悪いことが知られており、症状が疑われた場合(泌尿器症状の悪化、下肢の痛み・痺れ・感覚低下・脱力・変形や萎縮、靴ずれ、腰痛など)には二分脊椎専門チームによる診察を行っています。

もやもや病

もやもや病では、脳に血液を送る内頸動脈が狭窄/閉塞するために様々な症状(脳虚血症状)の原因となります。初期には狭窄/閉塞した血管の代わりに非常に細い“もやもやした”血管が増勢して血流が代償されますが、病変が進行し脳への血流が低下すると一時的な手足のマヒや、言葉が出にくくなるなどの症状で発症します。さらに病変が進行すると、脳梗塞に至り、手足の麻痺や言葉の障害、知能低下に至るものもあります。特に年少例(6才以下で特に3歳未満)では脳梗塞のリスクが高く、病変が急速に進行する例が多く、診断された場合には早期の治療が推奨されています。確実な効果が認められている治療は手術で、脳への血流低下を改善するために、“血行再建術”を行います。血行再建術には直接法と間接法があり、間接法では脳の表面に血管、筋肉、硬膜を付着させます。これらの組織から脳に入る新しい血管が概ね2週間~数カ月かけて形成されて脳の血流を改善します。直接法では脳の表面の血管と頭の皮膚を栄養する血管をつなげるバイパス術を行います。手術した直後から脳の血流が改善するため間接法の補助として有用です。我々は年齢や病状に応じて個々の症例で最善の手術時期、手術方法を選択しています。

小児脳腫瘍

小児の脳腫瘍には様々な種類があります。当院では主に化学療法、放射線治療を必要としない頭蓋咽頭腫などの良性腫瘍を主に治療しています。化学療法や放射線治療を必要とする疾患に対しては東北大学病院脳神経外科、小児科、放射線科、古川星陵病院鈴木二郎記念ガンマハウスなどの専門施設と連携し最先端の治療を提供しています。また、手術後リハビリテーションが必要な場合には院内リハビリテーションは勿論、隣接する拓桃医療療育センター・拓桃支援学校でも対応しています。

キアリ奇形/脊髄空洞症

小脳の下部(小脳扁桃)が下垂することにより脳幹部が圧迫され、頭蓋と頸椎の境界部分(頭蓋頸椎移行部)で髄液の循環が障害されるなどして様々な症状を出すことが知られています。また、脊髄内部に髄液が貯留し脊髄空洞が見られることも知られています。症状としては頭痛や上肢に多い温痛覚の障害、脱力などが多く見られます。脊髄側湾の精密検査で見つかることもあります。無症状の場合には経過観察を行いますが、症状がある場合、画像上脊髄空洞症が進行する場合には手術治療をお勧めしています。手術は下垂した小脳扁桃により狭くなった後頭部の頭蓋を手術によって削除し、同部を減圧します。当科では初回手術としてはこれに加えて硬膜外層切除術を加えて、手術中にエコー検査を行い同部が減圧されたことを確認しています。この他に硬膜の拡大形成を行ったり、特殊な症例では脊髄を牽引している脊髄末端部分のヒモ様構造(終糸)を切断する手術を試みることもあり、個々の状態によって治療法を選択しています。脊髄髄膜瘤に伴うキアリ奇形では水頭症治療がうまくいっていないときに見かけ上キアリ奇形が進行することがあり、その場合には水頭症治療が優先されるので注意が必要です。

内視鏡手術

当科では水頭症やくも膜嚢胞、脳室内腫瘍などに対して低侵襲な内視鏡手術を行っています。内視鏡手術は骨を大きく外す(開頭手術)の必要がなく、小さな骨の穴から手術をすることができ、傷が小さく、筋肉を傷つけることが少ないため、術後の疼痛が少ないなどの利点があります。開頭手術と内視鏡手術が同等に有効であると判断される場合には積極的に内視鏡手術を行うようにしています。

林 俊哲 
(はやし としあき)

職名 科長
診療領域
専門領域
脳神経外科
資格等 日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医・指導医
日本神経内視鏡学会 技術認定医
日本脳卒中の外科学会 技術指導医
日本小児神経外科学会 認定医
臨床研修指導医
東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座 客員教授
東北大学脳神経外科 臨床教授
東北医科薬科大学脳神経外科 臨床教授

神崎 風弥 
(かんざき ふうや)

職名 後期研修医

 

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